コロナも大分落ち着いてきた為、趣味の美術館・ギャラリー巡りを再開することに。そこで久々に21_21 DESIGN SIGHTへ。
開催されていたのは「ルール?展」というもので、エンドルフィンズの組織運営システムであるホラクラシーと関係性の強いテーマだったので、この展示内容をご紹介しようと思います。
この日はたまたま、「サイレント?デイ」。しかし、カップルや友達できている人達も多く、普通に会話が聞こえてくる。
まず初めに参加型展示を体験。10数名ほどの人達が舞台上に立ち、様々なアンケートに答えていく。質問内容は政治色が強く、違和感を覚えたが、展示内容を考えると世の中の”ルール”には法律が強く影響している為、テーマにあった内容ではありました。そして、それらの質問を答えて行くことにより、これから見て行く展示の見方をマインドセットされたように思います。
そしていざ、展示会場へ。
目次
ビールのデザイン
まず初めに目にしたのは、法律によって影響されるデザイン事例。以前いた広告制作会社でもビール関係の仕事に携わったことがありますが、酒税法によってビールの種類は複雑になっています。
ビールは麦芽比率によってそれがどの種類に分類されるかが変化し、税率も変わります。その為、酒税やビールの定義が変わるごとに、企業は微妙な調整を行い新たなビールを開発。少しでも税率を下げようといういたちごっこをしているわけです。その為、第3、第4なるビールが生まれているわけですが、それに伴い表記や商品の打ち出し方も変更していく必要があります。つまり法律によりデザインが影響を受けているということです。
ちなみに酒類の定義はアルコール度数1%以上の飲料。酒類の分類は4種類(発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類及び混成酒類)。分類ごとに異なる税率が適用されています。今後はこれらの税率を少しずつ統合して行く方向に動いて行くようです。
建築の制約
大学時代、私は建築を学んでました。建築には様々な法令が関わっています。建築基準法、消防法、都市計画法、バリアフリー法などの法律。住宅であれば住宅品質確保促進法、建築安全条例、景観条例といった条例など。そして、その建築物にはデザインと共通して設計者による設計思想が建築の隠れたルールとして機能しています。特に21_21を設計した安藤忠雄さんはコンクリート打ちっぱなしの建築を多く作られており、そこには安藤忠雄さんの強い建築に対する思想が影響しているのだと思います。
ローカルルール
展示会場には鬼ごっこの様々な種類・ルールが展示されてました。自分が子供の頃あそんでいたのは、はせいぜい「氷鬼」「高鬼」「ドロケイ」ぐらいでしょう。あとは単純な鬼ごっこ。
展示には「バナナ鬼」や「手つなぎ鬼」など知らない鬼ごっこがたくさん。そこで感じたのがローカルルール。遊びの中には地域によって独自のルールがあったりする。大富豪もそうですが、最近前頭葉を鍛えるために始めた麻雀にもローカルルールが存在するらしく、中国だとまた違ったルールに変化するといいます。
ローカルルールというのはその地域に根付いた文化の影響が色濃く影響しているのでしょう。それは遊びに限ったことではありません。関東ではエスカレーターの左側によるものですが、関西に行くと突然右側になったり(それで一度大阪のおじさんに怒鳴られたことがあります…)。
また交通に関するローカルルールなるものもあるようで、徳島の「阿波の黄色走り」や茨城の「茨城ダッシュ」など…こちらは単純にルール違反といったローカルルールですが。。
自然と出来上がっていくルール
ルールとして社会に定着するには2つのプロセスがあります。
●デファクトスタンダード
事実上のスタンダード。市場の使用実績、実装を前提として合意されることが多い。
●デジュールスタンダード
公的な標準組織によって開発されたスタンダードであって、国が法基準を適用するときその技術的根拠を示すために採用できるIEC(国際電気標準会議)、ISO(国際標準化機構)、ITU(国際電気通信連合)の3機関がある。
デファクトスタンダードの例としては、キーボードのQWERTY配列が紹介されていました。これは過去に使われていたタイプライターの文字配列の名残が現在に反映されているものです。JIS配列キーボードやASCII配列キーボードなど、コンピューター用キーボードの大半に英字のキー配列として採用されており、事実上の業界標準となっています。
デジュールスタンダードの例としては、シャンプーボトルのきざみの例が紹介されていました。これは花王が消費者から届いた声により、目を瞑っていても、あるいは目が不自由な人でもリンスとシャンプーの区別ができるようにと考案されたものでしたが、これが広く普及。最終的にはJIS規格化、国際化されました。
ルールは曖昧なものである
冒頭に「サイレント?デイ」の話をしましたが、これはおそらく、どこまで許容すべきかという問いを鑑賞者へメタ的に感じさせる実験だったのだと思います。”サイレント”とはどこまで静かにすることなのか。小声でしゃべれば良いのか、面白くて思わず笑い声が漏れてしまうのはアウトなのか。
もし小さい子が展示を見にきた場合、そんなルールなんて理解できないでしょう。ですが、子供だからしょうがないと大半の人が許容するのではないでしょうか。
最後に紹介したデジュールスタンダードの例を見ると、曖昧だったものが時間が経つにつれ明確になっていく流れが見て取れます。デファクトスタンダードに関して言えば、とても曖昧なものです。
今回紹介しませんでしたが、ルールの穴をついたアート作品の例もありました(葛宇字)。バンクシーの作品は違法な行為にも関わらず市民権を得ているせいか、それが受け入れられている状況があります。
今の時代は変化が激しく、既存のルールでは対応できない事例も増えてきました。常にルールが曖昧になる時代に、組織構造も常に変化しなければなりません。ホラクラシー組織であるエンドルフィンズは、そんな時代にあわせて常にルールを改変し、変化の激しい世界に対応できる企業でありたいと思います。