仕事の依頼のされ方はいろいろあります。企業と直接やりとりをしたり、間に代理店が入ったりと。「LIGHT UP LOBBY」のロゴデザインの案件は、企業側から依頼があった合同会社ドラマチック様からの依頼という形でした。
目次
そもそもロゴマークとは...?
以前働いていたデザイン事務所のアートディレクターの方が、”ロゴは広告の究極系”とおっしゃられていました。当時その意味がよくわからなかったのですが、実際自分がロゴを作るようになり、その意味が徐々に理解出来るようになってきました。
広告は、世間に広く情報を広げること。その情報には様々な思いが込められています。広告の場合は、写真やコピー、あるいはCMといったストーリーのある動画を作り、よりわかりやすく情報を伝える事ができます。
ロゴの役割も情報を伝える事には変わりませんが、シンプルな形状一つでその情報を伝えなければなりません。だからこそ難しく、”広告の究極系”という意味はそこにあります。
コンセプト設計
企業と直接やりとりの場合は、抽象的なワードや企業理念などをヒアリングし、こちらでコンセプトを決めロゴを作るという流れですが、今回は合同会社ドラマチック様が間に入られていたため、ある程度具体的なロゴの方向性やイメージの要望がありました。それは以下のようなものです。
◯「LIGHT UP」を他施設にて活用するとのことなので、
「LIGHT UP」のみでも活用できるデザイン希望(例:LIGHT UP CAFEとか、LIGHT UP LOUNGEとか)
◯キャッチコピー
まちに、暮らしに、仕事に、ヒカリを灯す (シェアする複合施設)
◯コンセプトキーワード
・色んな業種、生活スタイルの人たちがここに来て出会う
・日常に明かりを灯す
・出会いを生む場
・化学反応が起こる
・シェアする
・手を取り合う
・暮らしの中で
・官民協働
・相乗効果
◯新しいまちの社交場
食堂、カフェ、コワーキング、シェアキッチンがあるこの施設でご近所さん、サラリーマン、学生など色んな人たちが出会い、交流することで新たなコミュニティや新たな活動を生み出していく現代の社交場となる。
◯”私”×〇〇で日常に明かりを灯す
自分で起業したり面白いことをしている人や何かに一生懸命取り組んでいる人、美味しい料理や初めて食べた料理、知らない本や経験したことがないイベントに出会うこと。
この施設にくることで、私×誰か、私×何か、化学反応を起こして日常に明かりを灯すように、新しい一歩が踏み出せる場所になることを目指します。
◯具体的なイメージ
(1)灯りを灯しているイメージ。
(2)夕方に、1つ、また1つと建物や家、街頭に明かりが灯り、広がっていく。
その1つ目の明かりのイメージ
(3)夜空の星のようにたくさんあることでより光り輝くイメージ
(4)花火のようなイメージ
こららの要望やワードをもとに、既存のロゴマークをまずリサーチします。光というテーマで作られたロゴは山ほどあり、現状の要望やワードだけでロゴを作るとどうしても既存のロゴマークに似たようなものが出来てしまうと感じました。
そこで、要望を組み込んだ上で改めて自分なりにコンセプトを設計し、ロゴマークを作っていく事にしました。他にはないロゴマークを作るには、他にはないコンセプトが必要なのです。
<CONCEPT>
「LIGHT UP LOBBY」のコンセプトが“市民に光を当てる場” ということで、
一人一人に光を当てることで、それが大きな光となり、より多くの市民に光を当てれるような場所。
それが、「LIGHT UP LOBBY」。
ラフデザイン
ブラッシュアップ
ここで一つ問題が発生。打ち合わせ段階ではOKだったのですが、最終判断を下す責任者のところで視認性の問題を危惧されてしまいました。
まだ、最終調整のものを見せてなかったのも良くなかったのですが、もう少しシンプルなものに変えて欲しいという要望と共に、イメージ画像が送られてきました。
しかし、そのイメージ画像がどこにでもありそうな形状のもので、この形状のようなものに変更すると個性が失われると判断。そこで解決策として提案したのが、以下のベタ面にロゴマークを白抜きするというものでした。これにより視認性が保たれ、形状のオリジナリティも確保される事ができました。
ただ、最終的な完成形を見せたところ、ベタ面に白抜きバージョンではなくても視認性が保たれているという判断に至り、結果自分が一番求めていた通常のロゴマークを基本的に使用していく事に決定しました。
まとめ
ロゴマークは世の中にたくさん溢れています。視認性や汎用性を確保するには極力シンプルなロゴマークを作る必要がありますが、オリンピックのロゴ問題のように、既に同じようなロゴマークが存在した時、問題になる可能性があります。
その中で、いかに個性を保ちながらシンプルで印象的なロゴマークを作るか。今回の例では、シンプルに作りつつ、単調にならないよう一つ一つの光の位置をずらしたり、線と線が絡み合うような形状にし個性を与えています。
ちょっとした工夫ですが、「神は細部に宿る」という言葉があるように、地味で小さなことの積み重ねでデザインは出来ています。だからこそデザインは難しいのですが、面白くやりがいのある仕事だと思います。