皆さんこんにちは、エンドルフィンズ代表の田上です。
コロナの影響もあり、最近各社さまからECサイト構築のご相談を頂きます。
しかしながら、我々として、ほとんどのお客様に対して自社ECサイトを作ることをオススメしていません。
今日はその理由と、自社ECサイトを始めるならどのような戦略を取りながら始めるべきかについて解説したいと思います。
目次
ECサイトで伸びているのはプラットフォーマーだけ??
こちらは、富士経済さんが出しているレポート『通販・e-コマースビジネスの実態と今後 2020』で記載されていた2019年のECプラットフォームが物販EC市場に占めている割合をグラフ化したものです。
EC市場は年々伸びていると言われていますが、実は、成長しているのはAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのプラットフォーマーと呼ばれる事業者たちだけなのがわかります。
自社サイトの成長は2018年をピークとしてマイナスに転じています。
コロナの影響もあり、2020年や2021年は、この割合は少しは変わるかもしれませんが、大きなトレンドで捉えると、やはりAmazonや楽天などのプラットフォーマーは今後ますます強くなり、それ以外のECは弱体化すると見て間違いないでしょう。
なぜなら、デジタル空間上では、理論的には無限に情報を掲載できるため、プラットフォーマーのECサイトは時間とともに世界中のあらゆる商品を扱うようになっていくからです。
物流の壁はあるものの、プラットフォーマーのECサイトに行けば概ねなんでも揃うという状態が作れ、それはユーザーにとっても便利な状態であるため、Googleなどの検索エンジンはAmazonや楽天などを検索結果の上位に表示するようになっていきます。
こうした大きな流れが確実視されている中で、自社ECサイトを多大な費用をかけて構築するのは得策ではありません。
では、どうすれば良いのか。
以下に私がクライアントの方々にアドバイスしている内容を記載します。
スタートアップや中小企業が取るべきEC戦略の4つのステップとは?
前提:ECサイトは商品力が全て
まず、EC戦略を考える上で大前提として考えなければならないものは、『ECは商品が全て』ということです。
ECサイト構築後のSEOや、広告での認知拡大、サイトのUI・UX設計なども大切ではありますが、それも商品力がなければ役に立ちません。
商品力を磨く上で重視すべきなのが『徹底的にニッチを追求すること』と『一見さんに売れること』この2つです。
前項の通り、今後ますますプラットフォーマーの力は強くなっていきます。この状況下で自社ECサイトが生き残るためには、徹底的にニッチを追求し、ファンを獲得する以外に道はありません。
徹底的にニッチを追求し、自社ECでしか買えない魅力的な商品を揃えることが出来ればプラットフォーマー達の寡占市場でも生き残ることが可能になります。
また、ECサイトを運用していく際に最も高いハードルとなるのが『初回購入』の壁です。際立って魅力的な商品がなければ、新規ユーザーは初回購入という高いハードルを超えてくれません。
自社ECサイトを作り、生き残っていくためには、『徹底的にニッチを追求』し、『一見さんにも売れる』魅力的な商品を作り続けることが必要だと認識しましょう。よって、まずは商品開発から着手・テコ入れしていきましょう。
ステップ1:まずはプラットフォーム上で認知を広げる
商品開発に力を注げる体制が整ったら、いよいよEC戦略に着手します。
戦略のステップ1は、既存のプラットフォーム上で認知を広げることです。
ECサイトで一見さんに買ってもらうことが非常に高いハードルであることは前述しましたが、一見さんの目に触れるという意味で、既存のプラットフォーマーを利用しない手はありません。
まずは、Amazon、楽天、Yahooなど主要なECプラットフォームサイトに自社ページを開設し、商品を販売しましょう。
ここで重視すべきは、『新規顧客の獲得数』と『一見さんに売れる商品』です。
既存のプラットフォーム上で新規顧客を多く獲得するには、それぞれのプラットフォームに合った施策を打つ必要があります。それによって、検索順位が上がったり、おすすめ商品などのレコメンド機能で紹介されたりと認知拡大を狙えます。
具体的には、Amazonはユーザーからの口コミや評価を重視しています。良い口コミ、評価が付いている商品は多くの人の目に触れるようになります。よってAmazonに出店した際は、ユーザーに口コミ・評価を付けてもらう施策を取りましょう。
楽天やYahooは基本的に売上順に上位表示されるので、先ずは圧倒的な値引きなどで顧客を増やし、上位表示を狙いましょう。オススメなのは、在庫として余ってしまっている商品などを積極的に値引きして販売することです。
基本的には、SEO対策と同じく、各プラットフォームの上位表示されるアルゴリズムに従って対応を変えながら認知拡大を狙いましょう。
また、しばらくプラットフォーム上で販売していると新規顧客に買われやすい商品がわかってきます。それが『一見さんに売れる商品』です。
この一見さんに売れやすい商品がこの後の施策の鍵となるので、しっかりとデータを分析できる状態にし、どの商品が新規顧客に買われやすいのかを判断できるようにしておきましょう。
このデータが纏まった時点で次のステップに進みます。
ステップ2:一見さんを獲得できる商品のみプラットフォーム上に残す
ステップの2は、『一見さんを獲得できる商品』のみをプラットフォーム上に残します。
これは、一見さんを獲得できる商品のみをプラットフォーム上に残し、広告塔の役割を担わせ、2回目以降の購買を自社ECでしてもらうための施策です。
自社ECとプラットフォーム上に掲載されている商品が同じであれば、ユーザーにとってはポイントがつきやすいプラットフォーム上で購買するインセンティブが強くなります。
そのため、プラットフォーム上で買える商品と、自社ECサイトで買える商品の差別化を図ります。
プラットフォーム上では、すでにステップの1で一見さんに買われやすいデータを持った商品があるので、引き続き認知は拡大できるはずです。
初めて購入したユーザーに対して発送する商品の中に自社ECサイトの宣伝と、掲載している商品のラインナップなどを掲載したフライヤーを入れるなどして自社ECサイトの存在を訴求しましょう。
こうして2回目以降の購買を自社ECサイトで行うように誘導します。
ステップ3:自社ECサイトを構築し、その他の魅力的な商品ラインナップを揃える
ステップの3として、ここで初めて自社ECサイトの構築に着手します。
前提条件の項でも言及しましたが、ECサイトは商品力が全てです。いくら自社ECサイトへユーザーを流すことに成功しても、そこに掲載されている商品が魅力的でなければ今までの施策が全く意味をなさなくなってしまいます。
よって、ステップ1、2の施策を行なっている最中も同時並行で新規商品の開発を進めていきましょう。
これら魅力的な新規商品のラインナップが揃った段階で初めて自社ECサイトの構築に着手することをオススメしています。
自社ECサイトをお金をかけて構築しても、肝心の商品が揃っていなければほぼ確実に思い描いている売上とかけ離れた結果となるでしょう。
魅力的な商品ラインナップが揃ったことをトリガーとして自社ECサイトの構築に着手してください。
ステップ4:3回目購入までの戦略を立てる
ステップの4は、戦略の構築です。
ECサイトを利用するユーザーは、そのECサイトで3回物を購入すると、その後も継続してそのECサイトを利用する確率が高くなります。
よって、自社ECサイトにユーザーを流したあとは、3回目まで商品を購入させるべく施策を考えましょう。
具体的な施策としては、1回目を購入してくれたユーザーには、2回目の購入に使える値引きのクーポンを配布することや、1回目の購入時に会員登録をしてもらい、2回目の購入を考える頃にメールで商品の想起を図る、などです。
これらの戦略は扱う商材や業界によって様々かと思いますが、重要なのは3回目まで購入するストーリーを描いておくことです。
そうしたストーリーを事前に商品開発チームと共有し、新商品の開発の一つの要素として盛り込みましょう。ユーザーにとって、より継続的に使いたいと思われる商品になっていくはずです。
補足:LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)という考え方
補足情報として、ECサイトは顧客のLTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を最大化することを目標として考えることが非常に重要です。
例えば1度でも商品を購入してくれたユーザーが、購買単価1,000円の買い物を、年6回、2年間継続して買ってくれるとします。このケースでのLTVは12,000円となります。
つまり、顧客が初回購入で500円しか使ってくれなかろうと、そのユーザーは将来的には12,000円の売上をもたらしてくれることになります。
このLTVの考え方を採用すると、一人の新規購入者を獲得するために、どこまでコストをかけられるのかいう目標をより合理的に決めることが可能になります。これを『目標CPA(Cost per Acquisition)』と呼びます。
1つの商品が500円だから、その元を取ろうと目標CPAを50円などとすると出来る施策がほとんどなくなってしまいます。一方で、LTVベースで目標CPAを考えると、初回購入してくれたユーザーは生涯で12,000円の売上をもたらしてくれるので、目標CPAとして数千円は販促費としてかけても良いでしょう。
また、日々のECサイト運用の目標としてLVTの最大化を据えておくと、例えば購買単価を上げるべく新商品を開発するだとか、継続購入率を上げるべく戦略の改善を図るだとか、やるべきことの方向性が明確になると共に、実際にLTVが向上すれば、販促費にかけられる予算が向上し益々売上が上がるという好循環を生むこと可能になります。
ECサイト運用の際には、是非LTVという考え方を取り入れてみて下さい。
ECサイトを始めたい!気をつけるべきポイント、まとめ
今回は、自社ECサイトを作りたいという方向けに、とるべき戦略とECサイト運用の要点について解説しました。
ECサイトは『商品力』が全てなため、ECサイトを構築する前に自社内の新商品開発体制を見直しましょう。
自社ECサイトに魅力的な商品ラインナップを掲載できる段階まで、上述した戦略をステップ毎に実施することで自社ECにユーザーを流せるようになり、かつ定着させることが可能になります。
また、その際はLTV(顧客生涯価値)の考え方をお忘れなく。