皆さんこんにちは、エンドルフィンズ代表の田上です。
今回は、Webサイトのリニューアルに関するお話です。
最近Webサイトをリニューアルしたいというお話を多く頂くのですが、クライアントの多くは『デザインをカッコよくしたい』『Missionをアピールしたい』といった表層的なデザインの変更を主眼に置かれている方がほとんどです。
しかしながら、Webサイトのリニューアルには相応のリスクも潜んでいます。
折角リニューアルするからには、自社の売り上げの向上や、お問い合わせ数の向上に繋がる様な、本質的なリニューアルに資源を割くべきかと思います。
本記事では、Webサイトのリニューアルをご検討中の方に、Webサイトリニューアルの抱えるリスクと成果を向上させるためのポイントを紹介していきます。
目次
Webサイトリニューアルの目的
何のためにWebサイトのリニューアルをするか?という点は、私がクライアントとお話しする中でも特に念入りに議論する点です。
上述の通り、Webサイトリニューアルの動機として最も多いものが『現在のWebサイトのデザインをもっとカッコイイものにしたい』というものですが、そのカッコよさの先にどの様なゴールを描いているのか、解像度を上げていく必要があります。
具体的には、
カッコイイWebサイトにリニューアルする
↓
現在のWebサイトよりも多くの人がWebサイトに訪問してくれる様になる
↓
その結果『商談件数が上がる』『商品の売り上げが上がる』『採用申込数が上がる』など自社にとっての利益に繋がる
この様にゴールの解像度を上げることがWebサイトのリニューアルには非常に重要です。
なぜかというと、『商談件数が上がる』『商品の売り上げが上がる』といったゴールを達成するための手段として、Webサイトをカッコよくリニューアルすることが最善の手段ではないとデータ出ているからです。
むしろ表層的なデザインのリニューアルをすることでゴールから遠ざかる可能性が高いというデータも出ています。
詳しく見ていきましょう。
CV(コンバージョン)・CVR(コンバージョン率)とは
詳細の解説の前に、CVとCVRというマーケティング用語について説明させてください。
サービス事業者がWebサイト上で設定したゴールのことをCV(コンバージョン)と呼びます。
例えば、Webサイト訪問者にサービス問い合わせをさせたい、というゴールを設定した場合、問い合わせが一件入ると1CVとしてカウントします。
また、CV数 ÷ Webサイトを訪れた人数、のことをCVR(コンバージョン率)として算出します。
CVを何に設定するかは事業者の自由です。ECサイトを運営している方なら商品の決済完了をCVとして設定するでしょうし、BtoBのビジネスであれば資料請求やサービスの問い合わせをCVとして設定するのも良いでしょう。
Webサイトを有効活用するために多くの場合このCVやCVRといった指標を用います。ゴールの定義を明確にすることでWebサイトの改善や、費用対効果の算出がしやすくなるというメリットがあります。
突き詰めると、Webサイトのリニューアルは、このCV・CVRを今よりもより良い状態にするために行うべきなのです。
WebサイトリニューアルとCV・CVR向上の相関関係についての調査
それでは、WebサイトのリニューアルとCV・CVR向上の相関関係についてのデータを見ていきましょう。
こちらは、株式会社Waculさんが出している以下のレポートから調査結果を引用しています。
WaculさんはWebサイト約33,000サイトのアクセスデータをAIで解析しており、サイトリニューアルとCV・CVR向上の関係に関するデータも、それらの蓄積されたデータに基づいて分析したものです。
この調査は、33,000サイトの中からWebサイトリニューアルしたサイトを無作為に20サイト抽出し、リニューアル前と後の数値を比較しているものになります。
Webサイトリニューアルによる改善効果はほとんどなく、むしろ逆効果になる可能性が高い
こちらの調査によると、WebサイトリニューアルによってCV数が改善したサイトは、全20サイト中、たったの5件のみ。
残りの15サイトの内3件はCV数の変化なし、12件はリニューアル前より悪化したという結果でした。
CVRに関して改善したサイトは、全20サイト中、4件のみ。
残りの16件のサイトでは、リニューアル前に比べてCVRの変化がないサイトが3件、CVRが悪化したサイトが13件という結果でした。
総じて、WebサイトリニューアルによってCV・CVRが改善されるケースより、改悪するケースの方が多い結果となっています。
どんなリニューアルがCV・CVRを改善したのか?
上述の結果の要因を分析していくと、Webサイトのリニューアル方法とCV・CVRの改善結果には以下の様な特徴が確認された様です。
- 『構造的変更』を行なったサイトは全てCV・CVRのいずれかが改善していた。
- 一方で『表層的変更』を行ったサイトではCV・CVRのいずれかが改善したのは20%に留まり、CV・CVRがいずれも悪化したサイトは76%に登る。
『構造的変更』がキーワードの様です。
『構造的変更』とは
構造的変更とは、以下の様な変更のことを指します。
- 新規コンテンツの追加
- 既存コンテンツの消去
- CV定義の変更
- CVボタン数の変更
- 検索窓の機能変更
『新規コンテンツの追加』とは、ECサイトであれば商品特集サイトを新たに作ったり、BtoBサイトではサービスの事例紹介ページを新たに新設したりといった変更のことを指します。新設されたページにはCVに繋がるボタンが分かりやすく配置されているなどの変更がなされたことによってCV・CVRが向上したものと分析されています。
『既存コンテンツの消去』とは、リニューアル前に配置されていたコンテンツを消去することを指します。これによってWebサイト訪問者がCVまでの道筋がよりわかりやすくなり、CV・CVRが改善されたと分析されています。
『CV定義の変更』とは、例えばCVを『来店予約』から『資料請求』に変更させるといったことを指します。来店予約よりも資料請求の方がユーザーにとってコンバージョンしやすく、結果CV・CVRが改善されたと分析されています。
『CVボタン数の変更』とは、ページ内に設置しているCVに繋がるボタンの数を増やすことを指します。これによってユーザーはCVに至るまでの選択肢が増加したり、CVがより適切なニーズを満たすものに限定され、CV・CVRが向上したと分析されています。
最後に、『検索窓の機能変更』ですが、これは検索窓ついている絞り込み検索などの機能を削ることでシンプルな検索窓に変更することを指します。検索窓はユーザーの検索というアクションに関係しているため、この点に変更を加えるとCV・CVRが向上しやすいと分析されています。
表層的変更
一方で、実に76%がCV・CVRがいずれも悪化した『表層的変更』とは何を指すかというと、主に以下の通りです。
- フォント変更
- カラー変更
- 画像変更
- 既存コンテンツ配置変更
- ページレイアウト変更
冒頭で述べた『サイトをカッコよくしたい』という文脈はまさにこれらの表層的変更を指しているのではないでしょうか。
『フォント変更』『カラー変更』『画像変更』は、文字通りサイトに表示される文字のフォント、サイトが主に使用する色、また表示される商品の画像やイメージ画像の変更のことを指します。
『既存コンテンツ配置変更』はリニューアル前のサイト内のコンテンツの表示場所を変更させることを指しており、『ページレイアウト変更』は、サイトの表示されるコンテンツの大きさや、ページ内に占める割合や配分を変化させることを指しています。
Webサイトリニューアルにおける構造的変更のポイント
以上の調査結果から、いかに表層的変更、つまり見た目のカッコよさに惑わされず、構造的変更にリニューアルの重点をおくかが重要なポイントだということをご理解いただけたかと思います。
リニューアル後にCV・CVRを改善させたいのであれば『構造的変更』に重きをおくべきです。
その際の具体的なポイントを解説します。
新規コンテンツの追加
調査では、新たに配置した『特集記事』や『サービスの導入事例紹介』のページの中にCVに繋がるボタンを配置することによってCV・CVRが改善していることが分かっています。
これは、Webサイトを訪問するユーザーがWebサイトのコンテンツをあまり深く読まずにCVに至っていることの裏返しです。
サービス事業者は、自社の商品やサービスの良いところをアピールしたいので、色々とこだわりを持って写真や文言をWebサイトに盛り込もうとしますが、ユーザーはざっくりと斜め読みしてスクロールしてしまいます。
それらの内容よりも、CVへの導線、この場合でいうボタンが多く目に付く設計にした方がよりCVRが上がることを示唆しています。
リニューアルにあたっては、新たにコンテンツを追加できる設計と、そのコンテンツにCVに直結する様なリンクやボタンを分かりやすく配置してあげることがポイントになるでしょう。
既存の不要なコンテンツの削除
既存のWebページで設置されていたコンテンツの内、不要なものを削除することでCV・CVRが改善したことが示されていました。
これは、不要なページが消去されることによってユーザーにとってCVへの導線がより明確になったからだと分析されています。
また、Web集客の観点からは、一般ユーザーにとって役に立たない情報をWebサイトに含んでいるとGoogleなどの検索エンジンからマイナス評価を付けられる、という側面もあるので不要なコンテンツを削除することは積極的に行うべきです。
コンテンツ削除の際の注意点として、『おそらくこのページは見られていないだろう』といった感覚的な判断ではなく、Googleアナリティクスなどの分析ツールを導入した上で、訪問されているページとされていないページをデータに基づいて洗い出しましょう。
CV定義の変更
上述の例の様に、今まで『来店予約』をCVとして設定していたものをよりハードルの低い『資料請求』に変更することでCV・CVRが向上すると分析されています。
そもそも多くの事業体が、自社の業種業態や強みを明確にした上でCVを設定していない様に感じます。
例えば高単価な商品や、BtoBでリードタイムが長い商材などを扱っている場合は、ユーザーがWeb上で購入の意思決定に至るハードルは非常に高いでしょう。この場合、CVの定義を『購入ボタンを押す』に設定していてもCV・CVRは芳しくないことが推察されます。
こういった商品特性を持つWebサイトでは『購入ボタンを押す』よりも『資料請求』といった低いハードルのCVを設定することで、自社の商品・サービスに興味をもつ顧客リストを整備し、その後継続的にアプローチする戦略をとる方が、結果的に売り上げを伸ばすことができるでしょう。
この様に自社の持つ特性に合ったCVを定義することがここでのポイントとなります。
Webサイトリニューアルのポイント、まとめ
今回は、Webサイトリニューアルにおけるリスクとポイントについてお話をしました。
デザインや写真の変更といった表層的なリニューアルは、見た目はカッコよくなるかもしれませんが、企業が本質的に追い求めるべき利益にはむしろマイナスに働く可能性の方が高いことを解説しました。
折角費用をかけてリニューアルするのであれば、『売り上げが増える』『採用人数が増える』といった企業にとって本質的に役にたつWebサイトにしたいものです。
Webサイトを自社の『武器』としてリニューアルさせたいという方は是非お気軽にお問い合わせください。