皆さんこんにちは、エンドルフィンズ代表の田上です。
今回は、Webサイト制作の値段について解説していきます。
現在は、Wixやペライチといった無料でWebサイトを作れるツールが出てきていたり、クラウドソーシングなどで格安でWebサイトを作っている個人と繋がれたりといった時代になってきました。
一方で、Web制作企業にWebサイトを発注すると下限が100万円からなどという話はザラにあります。
こうしたWebサイト制作の値段の違いはどこから来るのか?結局どこに頼むのがいいのか?
本日はそのような疑問に答える、Web制作企業の値付けの法則について解説していきたいと思います。
目次
Web制作の価格を決める3つの要素
Webサイト制作の金額は、主に以下の3つの要素で変動します。
- 担当する領域の広さ
- 関わる人の数
- 担当者の経験・スキル
一つずつ解説していきます。
要素1:担当する領域の広さ
Web制作企業といってもカバーする業務領域は、各企業によってバラバラです。
ざっくりとWeb制作企業が担当しうる領域を以下の図にまとめてみました。
一般論として、Web制作というと『デザイン』であったり、Webサイトを構築する『コーディング(フロントエンドやサーバーサイド)』だったりを思い浮かべる方が多いと思います。
ですが、今やWebサイトの制作前の『戦略』からクライアントと共に構築していく『コンサル型Web制作企業』であったり、Webサイト開設後もデータ分析や改善をクライアントと共に行う『グロースハック型Web制作企業』であったりと、Web制作企業の事業領域は拡大しつつあります。
当然Web制作会社に頼む領域が狭いと金額は安くなり、広いと高くなります。
具体的には、同じページ数のwebサイトを作るという仕事でも、
- ヒアリング
- ワイヤーフレーム
- ビジュアルデザイン
- HTMLコーディング
- 納品
という『デザイン』や『実装』の領域だけを依頼する場合と、
- ヒアリング
- ログ解析
- ユーザーテスト
- 競合分析
- 顧客定義(ペルソナやカスタマージャーニー)
- マーケティング戦略の整理
- コンテンツ企画
- デザイン調査&コンセプトメイク
- ビジュアルデザイン
- HTMLコーディング
- テスト
- 納品
というより上流の『戦略』や『設計』までの領域を依頼するのとでは、納品までに必要なタスクの量が大きく異なります。
この依頼する領域の違いが、価格に影響を与えるわけです。
この『領域』の文脈でよく起きる問題が、発注側は『デザイン』と『実装』だけを期待していたのに、Web制作側が『戦略』や『企画』までを工数計算していたり、Web制作側が『デザイン』や『実装』のみの見積もりを出していたつもりが、発注側がそれ以上の『戦略』や『改善』までを期待していた、といったケースです。
基本的にこの辺りは、Web制作側がしっかりと仕事の内容や工数を発注側に説明しなくてはならないと思うのですが、その定義をしっかりとせずプロジェクトを走らせてしまうと、後々お互いの不満が噴出する状況になりやすいです。
要素2:関わる人の数
Webサイトの制作費の多くを占めているのは人件費です。
Web制作企業の収益構造として、オフィスの賃料や設備費といった固定費の割合は低く、売上規模や販売量と比例して増えていく人件費が売上の5~6割を占めることがほとんどです。
Web制作の業態は、クライアントとのコミュニケーションや、その要望を踏まえたデザインなど、自動化できる領域が狭いという特徴があるため、売上規模を大きくしようとすると、その分人を増やす必要が出てきます。
また、仕事内容の属人性が高いというのWeb制作業の特徴と言えます。その属人性の高さ故に、プロジェクトをスムーズに推進しようとすると、人を管理するためのコミュニケーションコストが上がり、それらをマネジメントする高度な管理者が必要になります。
この管理者は経験者でなければ務まらず、大抵制作者より高額なフィーが支払われています。
このようにWeb制作という業態は、規模の経済性とは真逆の、規模の不経済性が働きやすいビジネスなので、質の高いWebサイト、つまり担当する領域が広く、納期にも遅れないWebサイトを発注しようとすると、関わる人が増え、必然的に金額が上がってしまうのです。
ここで、一つ気をつけたいことが、企業規模が大きいから質の高いWebサイトに仕上がる、と一概には言えないということです。
今までは、会社が技術者やマネジメントを雇用してWeb制作に当たるのが通例でした。雇用してしまうと簡単に人員削減はできません。雇用した分の人を養うために金額設定を高く設定せざるを得ない企業は多く存在します。
こうした業態に対抗する勢力として、近年は、必要最低限の少数精鋭型のWeb制作企業や、雇用形態を取らずプロジェクトごとに優秀なフリーランスでチームを組成するフリーランス型のWeb制作企業が台頭してきました。
かく言う私も主にこのフリーランスチームでの価値提供をおこなっています。
会社の規模が大きな会社にWeb制作をお願いしていたけど、満足のいく対応をしてくれないといった不満を抱えている方は、一度少数精鋭型やフリーランス型の企業に問い合わせをしてみてもいいかもしれません。
要素3:担当者の経験・スキル
規模以外で価格に影響を与える要因としてもう一つ挙げられるのが、担当者の経験やスキルです。
単純に経験が浅くスキルが低いスタッフを多く抱えているWeb制作企業ほど金額は安くなり、経験豊富でスキルが高いスタッフを多く抱えているWeb制作企業ほど金額が高くなる傾向にあります。
一般的に、安さを追求すれば経験が浅い担当者が担当することになり、そのリスクは、経験不足が故にプロジェクトの抑えどころがわからず、後々混乱が生じる可能性があるといったところでしょうか。
高い金額を払うことで経験豊富なスタッフをつけてもらえれば、よりストレスの少ないプロジェクト進行を期待できると言うことができます。
この辺りはWeb制作企業へヒアリングした上でどの程度の経験を持った人が担当することになるのか確認しなければなりません。実績等の調査も行なった上で発注するようにしましょう。
どの領域をWeb制作企業に依頼するのかを明確にしよう
Web制作金額を決める大まかな要素を解説していきました。
ここからは、実際に発注する際の具体的な手順について見ていきましょう。
Web制作企業に依頼する領域を定義する
まずは、発注企業側でWeb制作企業にどこの領域をお願いするのかを定義しましょう。
上述した通り、後々発生する不満や、金額感に対する理解の齟齬は、発注側・受注側、双方の担当する領域に関する理解の齟齬が原因となるケースがほとんどです。
まずは発注する企業内で以下の表に基づいてどの部分を発注するのか決めましょう。
多くの領域を任せる→値段は高くなる
当然、多くの領域を任せると値段は高くなります。
『戦略』を作る段階から入って考えてほしい、『企画』を提案してほしい、『改善』方法を考えてほしいなど、Web制作企業側が受け持つ領域が多くなるほど、打ち合わせに要する時間や考える時間、作業に費やす時間など様々なコストが発生するからです。
逆に限定的な領域だけ任せると値段は安くなります。
場合によっては、Wixやペライチといった自分で簡単に作れるWebサイト制作ツールなどを使えるケースも出てくるかもしれません。
この任せる領域を定義すると、Web制作企業を選定する際にも役立ちます。各社、自分たちの強みをアピールしています。任せたい領域に強みを持った企業を探しヒアリングしてみると良いでしょう。
どこまでを任せるのか、どこまでを自社の中で完結させるのかを定義するのが第一のステップです。
領域を決めたら、具体的な『期待すること』をすり合わせる
領域を決め、その領域に強みを持ったWeb制作企業を選定したら、次は具体的に期待することをWeb制作企業とすり合わせる様にしましょう。
Web制作企業は、その期待されることに答えるために必要な金額を見積もりで出してくれるはずです。
このステップを踏むことで、発注企業側は後々Web制作企業が『提案をしてくれない』『しっかり考えてくれない』といった不満を抱えるリスクを減らすことができ、受注側は『期待されていることはわかっているけどその分のお金をもらっていないから動けない』といった事態を回避できる様になるでしょう。
高い要求に安く答えてもらうのはリスクが高い
Web制作の現場では、『値切り』を要求してくるクライアントが一定数存在します。
これまでの説明で、発注企業側の期待と、受注側の認識の齟齬を無くすことがいかに重要なことかはお分かり頂けたと思います。
『値切り』を要求してくるクライアントの多くは、『支払う金額は下げるけど、期待する領域は変得たくない』という認識の方が多い様に感じます。
『値切り』をするのであれば、発注企業側の期待する領域を削らなければなりません。
後々、双方に不満が発生しない様に合理的な意思決定をしたいものです。
値下げは長期的に見て危険?
発注企業側の視点では、逆に安易な値下げに応じるWeb制作企業は、少し注意深く見ておくことをおすすめします。
Web制作企業が規模の経済が効きにくい業態であることは先で述べました。安く請け負うということは、企業の利益率を圧迫するか、もしくは人件費を削ることになりかねません。
そうした企業は長期的に見て衰退を余儀なくされるでしょう。場合によっては人材の流出、廃業、あるいは対応を頼んでも全然スピーディーに対応してくれないといった事態に陥りかねません。
値下げ圧力を高めようと安易に考えず、その会社が健全に経営できる金額で発注してあげることが、結局は発注企業側にとっても長期的なメリットをもたらすと考えた方が良いと、制作企業側としては思います。
RFPを作って、お互いの期待値にズレがないか確認しよう
発注企業側とWeb制作企業側との理解の齟齬を減らす方法の一つがRFP(提案依頼書)の作成です。
こうした書式でやり取りすることで双方の期待値の齟齬を一つ一つ取り除くことが可能です。
作成方法や、フォーマットは以下の記事で説明しています。是非、参考にしてみてください。
Webサイト制作の金額、まとめ
今回は、Webサイト制作金額の算定方法について解説しました。
ポイントは以下かと思います。
- 発注側でWeb制作企業にお願いする領域を定義しよう
- 多くの領域をお願いすると高くなる、限定的な領域を依頼すると安くなる
- 発注先は、よく調査しよう
- RFPなどを作って、お互いに期待値のズレがないかを確認しよう
費用重視で安く済ませたいのであれば限定的な領域に絞ってWeb制作企業を探してみてください。逆にしっかりとしたWebサイトを制作したい場合は、領域を広げて、その領域に強みをもつWeb制作企業を探してみましょう。
きっと自社の期待値とフィットするWeb制作企業を見つけやすくなると思います。