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経済的価値と取引コストから見るM&Aアドバイザー

はじめに

どうも、エンドルフィンズのカタリスト、細胞膜デザイナー、エコノミストのランディフです!

普段はM&Aアドバイザリーというポジションで、Endorphinsではなく別の組織において活動しているので、その関連でM&Aアドバザーの価値について取り上げる。

エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』を個人的に読んでいたら、ある章において「取引コスト」という概念が紹介されていた。

もともと経済学の概念として取引コストは理解していたが、M&Aってそもそも取引コストの観点から戦略的判断に資する情報を提供できるな、と思い立っていろいろとググってリサーチしたら、M&Aと取引コストに関する論文やレポートがいくつも発見できた。

M&Aと取引コストという概念の整理だけでも本が書ける程度の分量になることは容易に想像できたので、今回は、「ある企業がある企業・事業・組織をM&Aするかどうか」という観点ではなく、「M&Aの当事者(売り手/買い手)がM&Aアドバイザーを起用するのはなぜか」という観点で取り上げることとした。

Endorphinsにおいては、今後M&Aというオプションもとり得るし、Endorphins自体も現在の提供サービスとしていわゆる顧客企業からの受託・コンサルを展開しているため、Endorphinsを頼ってくれる企業の視点からもEndorphinsを見つめる機会になると思う。

取引コスト

取引コストとは

企業では、その企業が、自分たちのものではないリソースを調達・採用するときに、それに伴ってコストが発生する。そのコストのことを、取引コストという。

このコストには、金銭的コストと時間的コストを含む。

取引コストの種類

取引コストの種類としては、大別すると以下の3つに大別される。

取引コストの種類内容
探索のコスト取引相手を見つけるために支払うコスト
交渉のコスト取引相手と交渉を行うために発生するコスト
監督のコスト取引相手が契約した取引を履行するように監督と矯正を行うコスト

取引コストと内部化コスト

理論上は、取引コストが内部化コストを上回る場合に組織取引が選択される。下記の図であれば、一番右の「組織取引」したほうが良いと合理的に判断できる場合は、基本的に組織内部にその取引相手を抱え込むことが正しい判断となる。逆に、一回限りの受発注をすれば良い場合は、市場取引を行うことが正しい判断となる。

paddle branding1480.png (199.2 kB)
取引コストの最適化(パドルデザインカンパニー)

取引コストを理解していないがゆえの失敗例

  • 「正社員、業務委託など、雇用形態は自由に選べる!」と安易に主張している会社の多く
    • これは、社内に残すべきノウハウ・方法論・文化が残るように設計され運用されているのであれば問題ないが、その設計と運用が不適切だと、ただのビジネスマッチングプラットフォームにしかならず、トランザクションが発生するだけで、社会的に置き換えが容易なハコにしかならない。
  • どんどん外注に切り替える製造業
    • 筆頭として挙げられる例は、パソコンメーカーのDELLとASUSの歴史的関係。DELLは、自社で製造機能を持っていたが、それぞ段階的にASUSに外注化していった。そしてノウハウと製造能力を溜めていき、ASUSは満を持して自社PCを販売し始めた。対してDELLは、自社で独自に持っていた製造ノウハウを骨抜きにされ、企画と販売とサポート機能が自社に残る形となった。

身近にある取引コスト

  • 保護者が子供を学校に通わせること
    • 子供は学校に通う権利はあるが、保護者は学校に通わせる義務はない。その条件下で、保護者が子供を学校に通わせるとは、例えば1日8時間という時間によって得られる環境・経験を、学校という施設に外部委託する取引を行っている、ということ。直接的に支払っているコストとして保護者が負担しているわけではないが、例えば日本であれば、保護者などが支払う所得税や消費税などから国・自治体を通して学校への金銭分配がなされているため、構造的には保護者は金銭負担をしている。
    • 社会が機械のように働く労働者を欲し、学校は機械的な労働者を育成を請け負い、保護者は「子供を学校に通わせている自分」に満足し、保護者がそれを良しとするように社会がコンセンサス・文化を作り、保護者は労働者として働く、という関係性が社会的にデザインされているから成立するモデルである。

M&Aアドバイザーの起用と取引コスト

当事者がM&Aアドバイザーを起用する場合

結論としては、M&Aを進めるにあたって、「M&Aアドバイザーを起用する取引コスト」<「自社のリソースだけで進める内部化コスト」の関係が成立するのであれば、M&Aアドバイザーを起用するほうが合理的な判断となる。

M&Aにおいて、当事者がM&Aアドバイザーを起用するとは

M&Aにおける買い手または/及び売り手が、M&Aアドバイザーを起用することがある。

理論的には、買い手も売り手も、自分でM&Aのソーシング~エグゼキューション~実行~PMIができるのであれば、わざわざ他人でありコミュニケーションコストがかかるアドバイザーに業務を委託する必要など無いとも考えられる。

それでも、例えば下記のようなジョブを解決するためにアドバイザーを起用することがある。

  • 金銭的コスト比較:「安く済ませたい」
    • M&Aに割く自分(主に経営者、経営株主)の「稼働単価×稼働時間」と「アドバイザー起用の費用」とを比較して、後者のほうが安い。
  • 時間的コスト比較:「時間割きたくない」
    • 本業に集中したいので、M&Aはセルフサーブでやるよりもアドバイザーを起用したほうが時間を節約しながら動かすことができる。
  • 自分にない知見でのサポート:「わからないことは教えて欲しい」
    • M&Aにイロハがわからないので、経験豊富な知見をもつアドバイザーに手伝ってもらい、良い条件を引き出したい。

M&Aアドバイザーの起用を、取引コストの観点から整理

上記のようなM&Aアドバイザーの起用理由を取引コストという概念から観察すると、下記のようになる。

  • 金銭的コスト比較
    • 金銭的支出として、外部者であるアドバイザーを起用したほうが1回限りで且つ安く済む
      → 逆に言えば、M&Aを複数回やる企業は、M&Aプロセスを進めるノウハウを自社として持ったほうが合理的なことも想定される。その場合は、M&Aプロセスを進められる人を採用するという内部化の選択が取られることがある。
  • 時間的コスト比較
    • 例えば売り手からすれば、買い手の選択肢を最大化させたいのであれば、既に買い手とのつながりが豊富にあるアドバイザーを起用したほうが自分で探してリストアップするよりも効率的に目的が達成される。
      → 逆に言えば、自分のリファラルでのつながりが豊富にある売り手であれば、アドバイザー起用をしての追加の探索コストをかける必要がない場合も考えられる。
  • 自分にない知見でのサポート
    • 例えば売り手からすれば、初めての売却検討で、「買い手に刺さる資料」の作り方がわからないため、その資料作成のサポートのためにアドバイザーを起用したほうが効果的になると考えている。
      → 逆に言えば、自分で売却経験があって戦略策定と資料作成が効率的にできるのであれば、ちゃんと思い通りに動くかどうかの監督のコストをかけてまでアドバイザーを起用することが合理的でない場合がある。

※M&Aアドバイザー起用するかどうかの、売却者側から見たときのポイント

 ※『会社売却とバイアウト実務のすべて』p.362

M&Aアドバイザーの経済的価値に関する誤解

よくある誤解として、「アドバイザーの業務が効率化されたりしてこれまでのような労力がかからないのであれば、アドバイザーの報酬も下がるのでは?」ということが挙げられる。

言い換えると、「そんなに労力がかからないことをしているのであれば、支払われる報酬が下げられるのでは?」という発想が生まれ得る。

私のいまいる会社は、M&Aの全体について効率化していくことを志向しているため、特に自社内でこの誤解が生まれる可能性がある。

これが誤解である理由は、ステークホルダーがアドバイザーを起用して成し遂げたいジョブ自体は変わらず、ステークホルダーにとってのアドバイザーの提供価値は変わらないためである。

具体的には、ステークホルダーからしたら、アドバイザーの業務(NDAの用意、ロングリスト作成など)が効率化されようが、自分のジョブが解決されるかどうかという観点では関係が無い。すなわち、同じ提供価値であれば、アドバイザーへの報酬金額が変わらない。ただし、アドバイザーにとっては下げても充分に粗利を確保できる余地が生まれる。

構造的には、アドバイザーとしては、「報酬が下がっても粗利を確保できる」ことは事実としてあっても、「提供価値が変わらないのだから報酬は変わらない」ということになる。

仮に他社が安い報酬体系でサービス提供したとしても、その会社が構造的に粗利が確保できる体制で無い限り、自分の利益を減らしてサービス提供し続けるだけとなる。この点、価格で対抗しようとすれば対抗できる(=価格を下げても充分な粗利が確保できる)ことは、自社に競争力をもたらしている。

※提供価値と価格は常に対応関係にあるわけではないが、長期では基本的に対応関係に収束する。

おわりに

当事者(売り手/買い手)からのM&Aアドバイザーの起用という観点で本稿は記述したが、Endorphinsの提供サービスを購入する企業のインセンティブへの理解を深めるなど、取引コストという概念は汎用性が広いので、今後もこの観点を適宜用いながら組織設計などに活かしていく。

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