どうも、エンドルフィンズのクリエイテイブカタリストのランディフです!
今回は、エンドルフィンズ内で課題図書として全員が読んでいる、『No Rules』という本の中のエッセンスを紹介したいと思います!
2021年11月現在では、Netflixが保っている「業界最高水準の報酬」を支払う仕組みなどは、エンドルフィンズでは現在のフェーズとしてマッチしないことを主因として作っていないですが、フィードバックの4Aの部分など、チーム内で参考にしている/しようとしている箇所はたくさんあり、課題図書として位置づけています。何よりも、各個人がクリエイティビティを発揮する仕組みは、エンドルフィンズとして最も大事にしていることの1つですし、クリエイティビティが重要な業界に身を置くNetflixは非常に参考になるところが多いので、ものづくり・作品づくりをしている組織は参考になるところが多いと思います。
『No Rules』のエッセンスの要点
『No Rules』におけるエッセンスとして、下記の3つを取り上げます。(日本語の本であれば、p.18~19で記載されている3つ。)
- 能力密度を高める
- 素直さを高める
- コントロールを減らす
『No Rules』のエッセンス
目次
「能力密度を高める」
前提
ルールや管理プロセスは、だらしない行動、職業人にふさわしくない行動、無責任な行動を防ぐために設けられる。
換言(対偶)
だらしない行動、職業人にふさわしくない行動、無責任な行動をする人がいない環境であれば、ルールや管理プロセスは不要となる。
※B(ルールや管理プロセスが必要である)でないならば、A(だらしない行動、職業人にふさわしくない行動、無責任な行動を防ぐ)でない。
条件の追加
換言したことに対して、条件として下記を追加する。
- 優秀な人材であれば、クリエイティビティを発揮する可能性がある
「能力密度を高める」ことに関する結論
優秀な人材であれば、クリエイティビティを発揮する。また、優秀な人材で組織を作れば、クリエイティビティを阻害する1つの制約条件(ルールや管理プロセス)を取り除くことができ、クリエイティビティの発揮を促進する。そのため、優秀な人材のみで組織を作るべきである。
図で理解
現在のエンドルフィンズではどうするか
2021年11月現在のエンドルフィンズは、いわば組織立ち上げフェーズにあり、まずは収益基盤を固めることを戦略的に優先しています。そのため、Netflixのように「優秀な人だけを集める」ということ、そしてそれを実現するために現実的に必要となる、高い分配金額(=高い報酬)の原資を確保できているわけではありません。
ただし、ここは少し意見が分かれるところではありますが、「優秀な人」だけを集めずとも、各個人のクリエイティビティを担保するための基礎づくりをすることは条件付きで可能だと考えています。
具体的には、ホラクラシー組織運営モデルを採用することがその1つです。ホラクラシーはティール組織の1つの形態のため、ティール組織における特徴の1つである「組織で活動する人々が、能力の発揮を阻害されないこと」を実現することができ、それをエンドルフィンズでは取り入れる意図を持っています。
ここで注意ですが、上記で私は「優秀な人材であれば、クリエイティビティを発揮する可能性がある」、「条件付きで可能」といった表現を使ってきました。これは、ホラクラシーを採用すれば自動的に何かが可能になるというわけではないためです。言い換えると、組織運営モデルとしてのホラクラシーの採用をしても、それはクリエイティビティを発揮するための必要条件であって十分条件ではないということです。また、Netflixはホラクラシーを採用しているわけではなく、エッセンスは共通しつつも、ホラクラシー的な組織運営モデルを構築していることからわかるように、ホラクラシー自体も本質的には必要条件ですらないです。
そのうえで、あえてホラクラシーのエッセンスをじっくりと理解して効果的に取り入れるために、エンドルフィンズではホラクラシーを現時点では採用しています。
「率直さを高める」
前提
常識的な礼儀作法に従っていると、互いのパフォーマンスを新たな次元に引き上げるのに必要なフィードバックができなくなる。
※A(常識的な礼儀作法に従う)ならば、B(互いのパフォーマンスを新たな次元に引き上げるのに必要なフィードバックができる)でない。
換言(対偶)
互いのパフォーマンスを新たな次元に引き上げるのに必要なフィードバックができるならば、常識的な礼儀作法に従っていない。
※B(互いのパフォーマンスを新たな次元に引き上げるのに必要なフィードバックができる)ならば、A(常識的な礼儀作法に従う)でない。
「率直さを高める」ことに関する結論
有能な社員が、常識的な礼儀作法に従わずに当たり前のようにフィードバックをするようになると、全員のパフォーマンスの質が高まり、且つ、お互いに対して暗黙の責任を追うことで従来型のルールは更に不要となる。そのため、有能な社員が、常識的な礼儀作法に従わずに当たり前のようにフィードバックをするようになる環境を作るべきである。
図で理解
現在のエンドルフィンズではどうするか
ここも「優秀な人」だけを集めずとも、仕組みと訓練で基礎づくりすることは可能だと考えています。
具体的には、これはNetflixのものをそのまま引用していますが、フィードバックに関する4Aを取り入れることとしています。フィードバックの4Aとは、下記の4つのことです。
- フィードバックを与える側
- 相手を助けようという気持ちで (AIM TO ASSIST)
- 行動変化を促す (ACTIONABLE)
- フィードバックを受ける側
- 感謝する (APPRECIATE)
- 取捨選択 (ACCEPT OR DISCARD)
優秀な人だけを集めずともできると考えているのは、上記4Aは非常に具体的で、誰もが意識すれば今のフィードバックが発生したときの自分の行動を改善できるからです。
Netflixにおいて、「優秀な人」だけを集めて上記4Aを続けていっていると考えると、恐ろしいほどの効果が生まれていると考えられます。
エンドルフィンズにおいては、上記4Aを満たす(厳密には、フィードバックをする側とされる側とで2つずつなので、まずはフィードバックする側の2Aを満たす)ようにコメントできる簡単なシステムを組んでみたり、NotionのTableでコメントしてみたりという施策を始めています。ここはまだまだ手探りですが。
一個人として
そして、もちろんフィドーバックをする側・される側の双方ではあるものの、私個人として特に重要だと考えているのは、される側の姿勢です。
自分自身は、フィードバックを受けたときに、それをまずは飲み込んで咀嚼するという姿勢が欠けていた時期は人生を通じて非常に長かったように思います。正直、今もそういうところはあると思いますが、ここ数年で意識をするようになりました。
フィードバックを受ける側が、フィードバックをする側に対して「フィードバックを与えても大丈夫」と感じてもらう空気感を作ることは、最近になるまで自分はできていなかったなとつくづく思います。「口出すんじゃねえ、コラ」みたいな雰囲気をまとっていた感じですねw
『No Rules』のなかでは、この「フィードバックを与えても大丈夫」という雰囲気のことを、「帰属のシグナル」と表現してます。帰属のシグナルは、例えば下記のようなしぐさや行動のこととして本のなかで取り上げられています。
- 感謝の気持ちを声音ににじませる
- 話している相手に物理的に少し近づく
- 相手の目を親しみを込めて見つめる
- 勇気を出して言ってくれたことに感謝の言葉を伝える
- フィードバックしてくれたことを大勢の前で話題にする
私個人としては、フィードバックをすること自体はなんの抵抗もなく、むしろたくさんしたいと元々思っていました。単純に、良いモノ・サービスを提供したいですし、相手が成功するように手を貸したいので。
ただ、フィードバックを受ける側が受け入れる姿勢が全く無いと、フィードバックする側は「じゃあフィードバックしなくていいや」というのは、自分も普通に感じます。その立場としての逆を自分はやってきたんだなと。反省。
「コントロールを減らす」
Netflixにおける原則、指針
管理職には「コントロールではなくコンテキストによるリーダーシップ」という原則を教え、社員には「上司を喜ばせようとするな」といった指針を与える。
エンドルフィンズにおける上記の原則、指針の取り扱い
エンドルフィンズは組織運営モデルとしてホラクラシーを採用している。ホラクラシーにおいては、上記のNetflixのような管理職や社員に対する原則や指針とことなり、そもそも下記が組み込まれている。
- 「人(パートナー)に対する管理」という概念がなく、あるのは憲法である。憲法のもとで、ロールが並存する。
- コンテキストはロールという形で常に明確化されている。
エンドルフィンズにおける結論
「人に対するコントロール」という概念が無い。権力を再分配するルールを明文化した憲法があり、憲法によるガバナンスを通じて追加・修正・削除されるロールがあり、パートナーは憲法に則ってロールに選出/アサインされるのみ。
まとめ
『No Rules』におけるエッセンスとして、下記3つを取り上げました。
- 能力密度を高める
- 素直さを高める
- コントロールを減らす
『No Rules』に関する一般的な考察とか、日本人としてフィードバックの文化がどうこうとかは、noteとかのメディアで執筆されている人が何人もいるので一般的なことはそちらに譲ります。
その代わり、「エッセンスはわかったけど、自組織では今どうしようか?」という観点は、本を読んでの理論的な思考展開よりも現実的に多くの人に参考になると考え、エンドルフィンズにおける取り入れ方・考え方について本稿で記載しました。
「いや、業界最高水準の報酬払えないわ」とか「有名じゃないわ」とかそこらへんの事情は各組織で現実的にありますし、エンドルフィンズも、組織のフェーズとして立ち上げ期でもあるので、その点で具体的にどうやって自組織で取り入れようか、ということの参考となれば幸いです。
また、本を読んでいてチーム内で話したのですが、Netflixはホラクラシー組織運営モデルを採用しているわけではないですが、極めてホラクラシー的な組織運営をしているところも、エンドルフィンズとして非常に参考にしています。Netflixが実現しているエッセンスが、エンドルフィンズが実現したいエッセンスと近いということもあるため、今は意図的にHolacracy One社のホラクラシー憲法をそのままエンドルフィンズで憲法として採択して運用してエッセンスの定着を図っています。
※ちなみに、エンドルフィンズでは『No Rules』を読む前にホラクラシーを採用しているのですが、あとから『No Rules』を知って、エッセンスがかなり近いので、参考にすることにした、という時系列になっています。